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令和4年度研究評価部会報告

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令和4年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告

  令和4年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、令和4年6月10日に開催された。令和3年度に終了した研究課題についての事後評価が行われた。

研究評価部会委員

外部より選任された委員(7名)

事後評価対象の研究テーマ

事後評価対象の研究テーマ(研究期間)

(1) 濃色豚スエードの染色堅ろう度向上
(平成31年4月1日~令和4年3月31日)

(2)多方向荷重からの婦人ヒール靴の安全性に関する試験方法の開発
(平成31年4月1日~令和4年3月31日)

研究テーマの事後評価結果等

 濃色豚スエードの染色堅ろう度向上

(1)研究の目的・内容
 ア 研究目的
   皮革の染色には一般的に酸性染料が用いられているが、色落ちしやすい。特に、スエードやヌバックなどの起毛革は、塗装仕上げを施さないため、色落ちを防ぐのが難しい。濃色豚スエードの用途は 、色落ちが問題にならない靴甲革用などが多いが、 新たな用途拡大を図る ためには、色落ちしにくい革が求められる。反応染料は、綿などのセルロース繊維に対しては高堅ろう度の染色物が得られるため、広く用いられているが、皮革に用いる場合は、濃色が出にくく、風合いが硬くなるなどの理由から普及していない。そこで、豚スエードにおいて、反応染料を用いた染色方法を検討し、濃色かつ高堅ろう度となる効果的な処方を見出すことを目的とした。
 
イ 研究の内容
   豚ウェットブルーを使用し、黒色反応染料を用いた染色 以降の工程 における以下の諸条件について 検討した。染色性、染色堅ろう度、柔軟性の点から評価し、最適となる処方を 作成した 。 また、染色した革を用いて、製品の試作を行った。
・防水剤(疎水性ポリマー剤)の使用
・反応染料を革に固着するために用いるアルカリ剤の種類
・染色条件(温度、 時間 及び pH)

(2) 評価
   部会としてA(良い)と評価する。濃色豚スエードの処方が確立できたことは、業界への成果還元や用途拡大に大いに価値があるといえる。

多方向荷重からの婦人ヒール靴の安全性に関する試験方法の開発

(1) 研究の目的・内容
 ア 研究目的
  現在、皮革技術センター台東支所では、ISO 22650に基づきヒール取付強さを測定している。この試験方法はヒールを後方(かかと方向)に引っ張り、ヒールの靴本体に対する固定程度を測定する試験方法である。しかし、実際のヒール取れの事故には後ろ方向に取れるだけではなく、ヒールが前方(つま先方向)に向けて取れる場合などもあり、現在の試験方法では対応できていない。複数の靴メーカーから、このような事故に対応できる新たな試験方法を確立するよう要望が出ている。
   婦人ヒール靴のかかと部に様々な方向からかかる荷重とヒール取付強さとの関係を明確にして、婦人ヒール靴の安全性の視点から新たな試験方法を確立し、製造工程改善やクレーム・事故の未然防止に役立てる。この試験方法の確立により、婦人靴の安全性および耐久性向上を図り、靴・履物関連業界の振興および都民生活の向上に繋げる。

 
 イ 研究内容
   かかとから爪先方向への力(前方荷重)のみに対応できる試験用治具を開発した。靴を靴型に履かせないで引張ることができ、ミュールなど踵部が無い靴でも試験ができるように土踏まず部分を強固に把持できる機構にした。また、さまざまなヒール高さに対応可能とするため、靴装着角度の調節機構を考案した。
   婦人靴の様々なヒールの形と大きさに対応できるように、分類した4タイプの多方向荷重ヒール固定治具を考案して製作した。
  多方向荷重(前、後ろ、横など任意の方向からの力)に対応できるヒール取付試験を行うため靴固定治具を以下の内容を考慮して開発した。靴の内側(ヒールセットブロック)と外側(ヒール固定バー)でしっかりシャンク部分を把持できる機構。歯車のかみ合わせを利用して360°任意の角度に固定できる機構。台座は試験位置を最適に調整できるような仕様。設計の更新および図面修正を経て、多方向荷重対応の新規試験用治具を製作した。
   新規試験方法による市販靴の多方向荷重ヒール取付試験の検証を行った。
 

(2) 評価
    部会としてA(良い)と評価する。試験用治具の開発により新たな試験方法を確立できたことは、安全な靴の製造や、利用者の安全性確保に大きく貢献するといえる。