令和5年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告
令和5年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、令和5年6月16日に開催された。令和6年度から実施される研究課題についての事前評価が行われた。
研究評価部会委員
外部より選任された委員(6名)
事前評価対象の研究テーマ
事前評価対象の研究テーマ(研究期間)
反応染料による羊スエードの濃色高堅ろう度染色
(令和6年年4月1日~令和9年3月31日)
研究テーマの事前評価結果等
反応染料による羊スエードの濃色高堅ろう度染色
(1)研究の背景・目的・内容
ア 研究背景・目的
<背景>
皮革の染色では主に酸性染料が用いられるが、革と染料の結合が弱いため色落ちしやすい。特にスエードやヌバックなどの起毛革は、塗装仕上げを施さないため、色落ちを防ぐのが難しい。羊スエード革を黒色などの濃色に染める場合、染め上がりの色を濃くするため、塩基性染料による工程を追加することもあるが、このことがさらに堅ろう度を低下させている現状がある。
一方、綿などのセルロース繊維では、繊維と強く結合する反応染料が広く用いられているが、皮革に用いる場合は、濃色が出にくい、風合いが硬くなるなどの理由から普及していなかった。そこで、当センター既報では、豚スエードを対象として、反応染料を用いて、硬くならずに濃色となる染色方法を確立し、良好な堅ろう度を得た。しかし、この処方を羊革に応用したところ、豚革と同程度の濃色にはならなかった。要因として、染色において、豚革は国内で一貫して原皮から製造する中で、クロム鞣し革(ウェットブルー)を原料とするが、羊は海外の工場で処理されたクラスト革*を原料とする違い等が考えられる。そこで新たに、羊クラスト革に特化した染色方法を検討する必要がある。
<目的>
反応染料を用いて、クラスト革の状態から染色を行う羊スエード革に対応した、濃色かつ高堅ろう度で硬くならない染色方法の確立を目的とする。
*クラスト革・・・鞣しの後、加脂して乾燥させた半製品の革。
イ 研究の内容
羊クラスト革において反応染料を用い、各種染色方法を検討する。測色値や染色堅ろう度等から評価し、濃色かつ高堅ろう度で硬くならない効果的な染色方法を見出す。
令和6年度:クラスト革の濃色染色を阻害する原因の究明及び対策の検討
令和7年度:濃色かつ高堅ろう度とするための使用薬剤や染色条件等の検討
令和8年度:実用化に向けた染色処方の確立
(2) 評価
A評価:6人、B評価:0人、C評価:0人 総合評価:A と評価する。