令和6年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告
令和6年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、令和6年6月14日に開催された。令和7年度から実施される研究課題についての事前評価が行われた。
研究評価部会委員
外部より選任された委員(6名)
事前評価対象の研究テーマ
事前評価対象の研究テーマ (研究期間)
(1)脱灰・ベーチングにおける環境負荷低減の確立
(令和7年4月1日~令和10年3月31日)
(2)多様化したソールデザイン靴の性状調査
(令和7年4月1日~令和10年3月31日)
研究テーマの事前評価結果等
脱灰・ベーチングにおける環境負荷低減の確立
(1)研究の背景・目的・内容
ア 研究背景・目的
<背景>
近年の持続可能な開発目標(SDGs)に対する取組みもあり、皮革産業においても省資源化や脱炭素化は避けて通れない課題である。その中でも水資源が豊富な日本は、海外と比較して水の使用量が数倍との試算もあり、また工業用水道の廃止による水道料金の高騰が企業経営を圧迫していることから、その削減は重要な課題である。
一方、豚皮は国内で自給できることもあり、輸送に伴うCO2の発生量は他の畜種と比較すると少なくて済む。また、塩蔵処理が不要であることから、製造工程における水の使用量を削減することができる。これらの利点を踏まえつつ都内皮革関連企業が生き残る手段の一つとして、従来以上に環境負荷低減に配慮した豚革製造を普及させることが必要である。
<目的>
センターでは、脱毛工程における水の使用量を大幅に削減した方法を開発したが、次工程の脱灰・ベーチングにおける検討は不十分である。本研究では、準備工程全体における水使用量の削減や省資源化を具体的に検証しつつ、従来と同等又はそれ以上の品質を有する豚革を製造し、普及に努めることを目的とする。
イ 研究の内容
令和7, 8年度:準備工程のうち、脱灰・ベーチングに焦点を当て、水の使用量を削減する方法を確立する。併せて、削減による環境負荷低減効果を検証する。
確立した処方を基に、業界ニーズに即した各種の革を製造する。
令和9年度:試験製造した豚革を用いて二次製品を試作し、成果の普及とPRに努める。
(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。経済性に危ぐする委員がいたので、経済性に考慮して研究を進めるよう。水の削減目標を掲げるようにとの意見が出された。
多様化したソールデザイン靴の性状調査
(1) 研究の背景・目的・内容
ア 研究背景・目的
<背景>
紳士靴・婦人靴のソールデザインは多様化して きているが、中でも厚底は最近のトレンドアイテムの一つで、特に若い世代に人気がある。その魅力は、ソールに厚みがあることで全身がスラリと見え、フラットシューズに近い安定感で歩きやすいのも魅力である。このソールデザインは、カジュアルから流行りのスポーツミックスまで幅広くさまざまなブランドから展開されている。しかし、デザインが多様化することで表底の接着不良や、バンドの引き抜けなどは捻挫や転倒など危険な事故につながる可能性があるため課題もある。
<目的>
多様化する ソールデザイン靴の表底の接着不良や、バンドの取付強度、表底の変形や摩耗などの性能を把握することを目的とする。市場の靴の調査および性能を把握し蓄積することは、安全な靴づくりのへの技術相談として活用でき、都民に向けた安心・安全な靴情報が発信できる。
イ 研究内容
令和7年度:依頼実績の集計及び分析
市販の靴を購入。価格帯、デザインを分けて市販品を購入及び評価
バンド取付強度、表底はく離、表底摩耗、素材の分析
令和8年度:爪先および踵部の圧縮特性(クッション性)、靴底の曲がりやすさ評価
令和9年度:歩行時の動作を想定した強度試験法の検討
(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。テーマ名に関して、幅広い視野でのテーマで行ってほしいと意見があった。靴底の素材の分類をした上での評価も取り入れて欲しいとの意見が出された。
※テーマ名は、後日、推進協議会の了承のもと「厚底靴の安全性に関する研究」に変更した。